南米's diary

2016年9月〜2017年3月頭まで南米を旅する無職な二人の愉快な日記。

初の乗馬でのろ子とともに、砂漠をのろのろと歩く

Hola! 今日は人生初の乗馬をしてきました。先日サンドボードをしたときに乗馬をしている人たちを発見し、「砂漠で乗馬?! 『エル・トポ』じゃん! 参加したい!」と思ったのです。早速、ツアー会社に予約をお願いしに行くと、「一人じゃダメ。最低でも二人いないと。月曜日の午前10時にここにまた来たら参加できるかどうかわかるよ(他の予約者がいるかもしれない)」と言われたのでしぶしぶ帰宅し、翌日の月曜日に再びツアー会社へと行きました。

「どうですか?! 予約できますか?」

「うーん、他の予約者いないね〜。でも、1万5000ペソ上乗せすれば一人でもいいよ」

なんと、参加できる! やったー! でも、なぜ今言うのかと疑問に思いました。昨日の時点で言ってくれればいいのに、と。文句を言う言語力は私にはまだないので、笑顔で「クレジットカードでお願いします(にこにこ)」と合計4万5000ペソ(約7500円)を支払いました。

いよいよ初乗馬

今回予約したのは、午前9〜12時までの3時間ツアーです。San Pedro de Atacama の街から出発し Death Valley まで行き、戻ってくるルートです。集合場所(ツアー会社)から車で5分程度のところに馬たちが集まっている場所がありました。そこでヘルメットと、足のプロテクターを装着し、簡単なレクチャーを受けます。右に行くときは手綱を右に、左に行くときは左に、停止させるときは手前に、走らせるときはお尻をぺちぺちとたたく、と。

そういえば、私一人かと思っていたのに他に二人ほど予約した人がいました。おそらく、私が予約したあとに予約したのだと思われますが、私が余分に払ったお金は……(返ってこず)。とほほ。

気を取り直して、いざ初乗馬です。切り株が馬に乗るときの台になっており、そこからひょいっと馬に乗ります。ひょいっと。ひょいっと。意外とすんなり乗ることができました。乗り心地は少しお尻が痛いことを除けば、いい感じ(ぐっ)。ガイドさんも含め4人で出発です。先頭がガイドさんで私は一番後ろ。だって、馬がのろのろ歩くんだもの! 普通に歩いているだけなのに、皆に置いていかれます。下記画像(のちの砂漠での一コマ)を見ればのろ子ののろさがわかるはずです。

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この馬は若い子なのかな、それとももうおばば、おじじなのかな、それともそれとも何か病を患っていて、いやいや本当は……などといろいろな妄想が頭に思い浮かびます。妄想の最中、馬が突然ストップして動かなくなりました。じょーーーーーーーー。突然聞こえてくる音。何事かと思ったら、おしっこです。マイペースな馬ですね(笑)。

馬を走らせるときはぺちぺちとお尻らへんをたたくのですが、ぺちぺちたたいてものろのろ歩く私の馬(もうこの馬は私の馬です)。ガイドさんに「もっと強く!」と何度も言われました。でも、そんなに強くたたくのはかわいそうで……ぺちぺちって感じでたたきました。のろのろマイペースな馬は私に合っているのでいいのです。のろのろで。みんな違ってみんないい。

途中で道路をパカパカと横断したのですが、周りには乾いた岩と乾いた土。その雰囲気に馴染まない整備されたきれいな道路を馬で横断するというのは、客観的に見てなかなか面白い光景だなと思いました。

砂漠を走る(歩く)馬

さて、犬とともに30分ほど歩いてようやく砂漠への入り口に到着しました。ここで入場料3000ペソを払います。

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ん? 犬とともに……? そうです。犬が最初からずっとついてきているのです。いつかいなくなるかな〜と思っていたのですが、いなくなる気配はまったくなく、むしろ「俺はどこまでもついていくぜ!」という気概しか伝わってきません。馬が走る速度よりも速く走り、途中で休憩し、また走る。休憩。走る。休憩。走る。それの繰り返しです。暑さで疲れているのか、舌をあらぬ方向に出しながら走っていました。頑張っている、犬。途中でガイドさんに抱かれていました。楽をしているな、犬!

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左右を岩で囲まれた岩通りを抜けると、ついに砂漠に到着です。砂漠の歩きづらそうな砂の上を、力強く歩いていくのろ子。みんなは遠く前を歩いています。このまま一人抜け出して、砂漠をさまよいたい気持ちを抑え、のろ子を少し速く走らせます。のろ子もやるときはやるのです。Go〜Go〜のろ子!

みんなに少し遅れて、一旦砂漠で休憩します。おのおの水を飲んだり、写真を撮ったり、ここまでついてきた犬に水をどばーっとかけてあげたりしています。砂漠に馬に犬に人間。ここ南米でこそ体験できる貴重な組み合わせです(多分)。

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途中でサンドボードをやっている人たちに遭遇したのですが、この日はまったく風が吹いておらず、私が参加した日のあの強風はいったいなんだったのだ! こんなに穏やかな雰囲気の中でサンドボードができるなんて! と一人で怒り狂いました。のろ子にどうどうと諭され、怒りは鎮まったのですが。

のろ子とともに生きる

休憩を挟んだらのろ子は少し体力が回復したようで、先ほどよりも速く走ってくれるようになりました。速く走るとパカパカ揺れて、お尻が痛いからそんなに走らないでくれよ……! となったのですが、のろ子はそんなことおかまいなしに、パカパカ走ります。パカパカパカパカパカパカパカパカパカパカ……。

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あぁ、気分爽快〜(お尻が痛いけど)。もう、のろ子と私は一心同体です。私が怒り狂っているときはのろ子に鎮めてもらい、のろ子が怒り狂っているときは私が鎮める。お互いが足りないところを補完し合う良い関係です。私はこれからは、のろ子とともに生きようと思います。ちなみに、ガイドさんの話によるとのろ子は16歳だそうで、今回いた馬の中では最年長でした。だから、のろかったのか……。

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泥まみれのろ子

最初の出発地点に到着したら、のろ子を水できれいに洗って今回の乗馬は終了です。私から直々に水を浴びてとても喜んでいるのろ子。と思ったのですが、他の仲間たちが待っている柵の中へ入っていくと、すぐさま地面に寝っ転がり、全身が土だらけ! せっかくきれいに洗ってあげたのに……しょぼーん。アディオス!

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アタカマの砂漠でサンドボードを経験

Hola! 今、私たちは砂漠に近い街・San Pedro de Atacama にいます。暑いです。毎日暑いです。9日間の滞在なので毎日まったり過ごしています。先日は SandBoard(サンドボード)という、スノーボードの砂漠バージョンのアクティビティを一人(まりあたんはお留守番)で楽しんできました。一人といってもツアーに参加したのでガイドを含め総勢5人で砂漠をぐいぐい滑ってきました。Sandboard San Pedroというツアー会社で午後4〜7時半(午前、午後、夜という3部構成)まで一人15000ペソ(別途エントランス料で3000ペソ。学生は2000ペソ。国際学生証ではなく日本で使っているもので大丈夫です)でサンドボードを楽しむことができます。

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アタカマの街から車で約15分。こんな感じで(動画参照)岩に挟まれたところを進むと砂漠が現れました。

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いよいよ、サンドボードをする準備に取り掛かります。靴、ヘルメット、サングラスを装着し、ボードを担ぎ、砂漠の山をひたすらのぼります。そうです。ここにはリフトというものなどはないので、のぼって滑る、のぼって滑る、の繰り返しです。砂漠の頂上までのぼると(疲れる……)、次はさらに高いところを目指して横(?)に進みます。(画像の赤矢印参照)

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ちなみに、画像だと斜面の傾きがどのくらい強いのかとてもわかりづらいのですが、結構な急斜面です。直角! とは言いませんが、それに近い傾きです。のぼることは自分との闘いです。下だけを見てひたすら進んでいくと、いつの間にか頂上に到達します。

この日は風がとても強くて、頂上に到達したあとの横に進む動作が大変厳しいものでした。168センチ(本当は158センチですが、多分チリで伸びた)、38キロ(本当は50キロですが、多分チリで痩せた)の私が吹き飛ばされそうになるくらいの突風が時折吹くのです。下は砂漠なので落下しても大丈夫そうですが、体がふわっと浮いて吹き飛ばされそうになるのは恐怖でした……。小柄な方はお気をつけください。

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また、風が吹くということは、砂があり得ないほどの強さで体を襲ってくるということです。私は半袖だったので、いててててててててて!!! となり、疲れて息を切らし、口で、ぜぇ、ぜぇ、と呼吸をしていると、前歯に砂がこびりつき、砂!!!! もう! となりました。多分、砂をたくさん食べました。唯一、目はサングラスに守られました。サングラスがなかったら目も開けられないほどだったので、忘れずに持ってきてよかったです。

ある程度の高さまで行き、ボードがよく滑るようにそこでワックス(ロウ)を塗ります。そして、ボードを足に装着して滑る準備が完了です。スノボーと同じ要領ですいすいす〜いと滑ります。そんなに滑らないけど。そうです、砂はそんなに滑りません。それなりの急斜面なのに、スノボーほどのスピードは出ません!!!! 怖がって重心を前や後ろにすると、ブレーキがかかってスピードは落ちる一方。ボードを進行方向に真っ直ぐに向けると一番よくスピードが出ます。最終的には滑りが悪くなり勝手に止まるので、いっぱいスピードを出しましょう!(これからサンドボードをする人へのアドバイス)

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サンドボードはスノボーほど長くは滑ることはできませんが(すごく上までのぼれば長く滑れるとは思います)、それなりに楽しいです! 下は一面砂なので転がっても平気です。まったく痛くありません。ただ唯一の欠点(?)は、滑るのは一瞬、だけども、上までのぼるのはその倍以上の時間がかかるということです。のぼるの大変……。楽しみのためには苦労が必要なんだ!!!

砂漠を上までのぼり腰を下ろし眺めていたら、「あぁ、『エル・トポ』……」と思いました。

ツアー会社のウェブサイトに滑っている動画がアップされたのでここにもアップします! 自分が滑っているところだけ抜きだそうかと思いましたが、もし改変禁止とかだったらあれれれれれなので、そのままリンクを貼っておきます。自分ではイケている感じで滑れていたと思ったのですが、意外にも、そう意外にも格好悪くて格好悪いです(無念)。

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そういえば、ガイドの方が言っていたのですが、ここアタカマにはアンデス山脈からの水が流れているらしいです。街中に川があったのでどこから流れているのかと不思議だったのですが、そんなに遠いところから流れ着いている水だったのですね。そして、アタカマのお金はサンティアゴに流れるらしく、「だから、僕たちはサンティアゴが好きではないんだ」(アタカマが裕福にならないから)と言っていました。なぜ、サンティアゴに流れるのかはわかりませんが……。サンティアゴの開発にでも使われているのですかね(想像)。

アタカマは小さい街ですが、素敵な街です! 毎日暑いけど、サンティアゴに比べると物価も高いけど、周りは砂と岩がたくさんだけど、素敵な街です! だって、夜空がとてもきれいなんだもん! 夜、空を見上げると、一面、星だらけです。私が住んでいる田舎でも星はそれなりに見えるのですが、それを上回る星の多さです。新月に近づいているからという理由もあると思うのですが、無数の星たちは私たちの心を癒してくれます。もういっそのこと、星になりたい……。あぁ、私は星。あの一番星の隣で小さく輝く星になりたい。I am a star. Soy una estrella.

ちなみに、UFOも見ました。二人とも見たので間違いないです。あれはUFOです。では、アディオス!

ティム・バートンとアレハンドロ・ホドロフスキーの映画を観て

Hola! 皆さんご存じの通り、私は映画を観ることが好きなので(詳しくはないです)チリでもばっちり映画を観ていますよ! 今日は、先日観てきたテム・バートンの新作『ミス・ぺレグリンと奇妙なこどもたち』とアレハンドロ・ホドロフスキーの新作『エンドレス・ポエトリー』の感想を書いていきたいと思います。ちなみに、両作品とも日本での公開は来年です。早く観ることができてラッキー。

ただただ楽しめたティム・バートンの新作

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映画好きと言いつつも、ティム・バートンの今までの作品は観たことがありませんでした。唯一、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を劇場で観たような気がしたのですが、調べてみたら劇場公開は1993年で、もし私が本当に観ていたとするなら、当時の私は1歳ということになります。驚異の記憶力ですね。と、ティム・バートンの作品を古い順に調べながらブログを書いていたら、見つけました。私が劇場で観た本当の作品を。『ティム・バートンのコープスブライド』です。ビジュアルが『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』と似ていますね。間違えるはずです。しかも、13歳のときに観たので忘れるはずです(正当化)。

チャーリーとチョコレート工場』すら観たことのない、ティム・バートン初心者の私が今回、『ミス・ぺレグリンと奇妙なこどもたち』を観て率直に思ったことは「わくわくする。楽しい」です。まさに、エンターテインメントです。ティム・バートンはこんなに素晴らしい作品をつくる人だったなんて今までまったく知りませんでした。

吹き替えではなく、スペイン語字幕で観たので、キャストたちは英語で演じています。細部は理解できませんでしたが、大枠は理解できました。端的に表すと「少年が奇妙なこどもたちと力を合わせて悪を倒す話」です。実に単純なストーリーだと思われるかもしれませんが、わくわく要素が至ることろにあり終始わくわくしましたわくわく。

奇妙なこどもたち

まず、奇妙なこどもたちですが、おのおの使える能力があり、それらがとてもわくわくするのです。手の温度が高すぎて何かに触るだけですぐに発火する少女や、体が軽すぎて重りをつけていないとすぐに宙に浮いてしまう少女(ビジュアルがとてもかわいい)、目を見てしまうと相手を石に変えてしまう双子のこども(ビジュアルが怖い……)たちなど、設定が面白いです。

こどもたちが能力を使って日常生活を送っているさまは「うわぁ、いいなぁ。ナチュラルに能力使って生活しているぅ。うらやましい!」となり、悪を倒すさまは「うわぁ! わくわく! ドキドキ! すごい!」となります。

ラブストーリーも

ストーリーには、主人公の少年と体が軽すぎて〜の少女のラブストーリーも盛り込まれています。物語が進むごとに徐々に近づく二人の距離。あぁ、二人の唇が触れてしまう……あぁ、ついに……(両手で目を覆い隠す)。バタンッ! おきまりのごとく、二人の唇の仲を切り裂くタイミングの悪い他のこどもたち。

最終的にはどんでん返しのハッピーエンドになるので安心してください。ちなみに、東京(確か東京だったはず)も出てきました。なんの話かわからないかと思いますが、映画を最後まで観れば「TOKYO!!」と思わず声が出てしまうでしょう。

チリ流の映画鑑賞?!

ティム・バートンの映画は、サンティアゴの大きなショッピングセンターなら大抵は入っているであろう映画館「Cineplanet」で観ました。平日の昼間だったので人はまばらです。料金は確か4000ペソ(約647円)で、日本の映画館と同様に自分で好きな席を選べました。席のシートは少し硬いものの許容範囲内です。

上映時間になりコマーシャルなり、他の映画の予告なりが流れ始めます。ここで私はある点に気がつきました。それは、場内の明かりが暗くならないことです。あれ? 明るいよね? チリの映画館って暗くならないのかな? とたくさんの「?」が頭に浮かび、その間に映画は本編に突入しました。

ということは、そういう仕様なのか。なんか変なの。と思っていたら、階段を駆け下りる少年が目に入りました。映画開始早々、トイレかな? と思ったのですが、その少年は壁際のスイッチをポチッと押し、その瞬間、場内が暗くなり、「ヒューーーーー!(拍手)」といった歓喜の声が後ろから聞こえてきました。場内が暗くならなかったのは、おそらくスタッフがボタンを押しに来なかったからだなと理解しました。いい加減なスタッフだな……。

ここで質問です。あなたは、映画の最後に流れてくるエンドロールはしっかりすべてみて、完全に映画が終わってから席を立ちますか? 私は、すべてみてから席を立つ派です。音楽を楽しみたいし、「家に帰るまでが遠足」と同じく、「エンドロールが終わるまでが映画」だと思っているので、完全に映画が終わるまで席にお尻が張り付いた状態で待ちます。

そうです。今回もそうしようと思ったのに、周りの人はエンドロールが始まった途端どんどん席を立ちます。ただでさえ、少ない観客がさらに少なくなっていきます。数十秒後には掃除のスタッフまで入ってきて、辺りを見渡すと私以外誰もいません。

スタッフは完全に「これから掃除します」の構えです。1秒後にでも掃除を始めそうです。小心者の私は「あわわっ」となり、エンドロールがまだ途中にもかかわず、席を立ってしまいました。あぁ、最後まで居たかったのに……と悲しくなり、のろのろと歩みを進め、その場をあとにしました……。

人生の師・ホドロフスキーの新作
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やってきました。私の大好きなホドロフスキーの新作。『エンドレス・ポエトリー』です。ホドロフスキーといえば、『エル・トポ』に代表される偉大なカルト映画の創作主です!! 『エンドレス・ポエトリー』の前編である、『リアリティのダンス』も日本にいたときに劇場でばっちり観ました。

雰囲気と内容が好きすぎてもう、「あぁ……(昇天)」となりました。今回はサンティアゴのモネダ宮殿の地下にある「Centro Cultural La Moneda」で映画を観てきました。ここには1カ所だけ映画を上映できるスペースがあり、そこで日々、いろいろな映画が上映されているらしいです。

大きな映画館では上映されておらず、しかも上映が1日に1回しかないのです。ホドロフスキーはチリ出身の偉大な人物であるにもかかわらず、この小さな扱い……。チリの友達に「ホドちゃんって知っている?」と聞いても、「知ってるけど詳しくはない〜」と興味がなさげな返事がきました。少しだけ残念な気持ちになりました。

さて、気を取り直して映画の話に移りたいと思います。この映画はもちろんスペイン語で作成されており、字幕はなしです。詳しい内容はほぼわからなかったのですが、雰囲気で「こういうことを言っているのだろうな〜」と想像することはできました。

スペイン語がわからずとも、ホドロフスキーの映画は素晴らしいのです! 観終わったあとに「あぁ、芸術って素晴らしい……」と感じ、しばし放心状態になりました。なんだかよくわからないけれど(話の大枠はわかる)、心にぐっとくるものがあるのです。というか、ぐっとしかきません。ぐっときすぎて、心が破裂するかと思いました。

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「現実」と「虚構」

まりあたんはスペイン語がわかるので、私よりも話の内容が理解できたと思うのですが、「うーん、よくわからなかった。何が現実で何が創作なのかわからない」と。この感想に私はその場では、「全部現実だよ!」と適当に答え、「え? 家が燃えていたのも?」と返され、「うーん、それはわからない……」などど、自分の適当さを改めて実感したのですが、よくよく考えてみると、「現実」と「虚構」を入り混ぜることこそが、ホドロフスキーの真骨頂なのだと思いました。

以前、寺山修司作の舞台『レミング~世界の涯まで連れてって~』を観たのですが、そこでも「現実」と「虚構」が入り混ざっていて何が現実で何が虚構なのかわからなくなるような演出になっていました。「現実」と「虚構」を混ぜた先にあるものは、たどり着くものは何なのか。それらを表現することで何を彼らは伝えたかったのか。現実とは? 虚構とは? 今、私が見ている世界は現実なのだろうか、それとも虚構なのだろうか。

よくわからなくなってきました。私のような凡人には頭を悩ませることで精いっぱいで、その先の解までたどり着くにはまだまだ頑張りが足りなさそうです。とりあえず、ホドロフスキーの新作『エンドレス・ポエトリー』はとてもよいということだけは伝えておきたいです。成長する過程でできた父親とのわだかまりが完全には解消できず、さらに父親の死に目にあえなかった後悔がずっと胸にあり、今回の映画でようやく自分を癒すことができたホドロフスキー

今、映画について調べていて判明したのですが、なんと今回の新作の撮影監督はあのクリストファー・ドイルらしいです。すごい……。テンションが上がりますね(と言いつつも、詳しくは知らないけど……)。クリストファー・ドイルといえば、2014年の東京国際映画祭で絶賛された浅野忠信主演の『壊れた心』(残念ながらいまだ劇場未公開……のはず)の撮影監督でもあります。今回の新作は大物たちが携わってできた傑作なのですね。ホドロフスキーの出身地・チリでこの映画を観ることができてとてもうれしかったです。

まさかの出会い

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さらに、上映後にロビーに出ると、ホドロフスキーの少年時代を演じていたイェレミアス・ハースコヴィッツ(Jeremias Herskovits)がそこに立っていたのです!! 最初は誰だか定かではなかったのですが、一緒に写真を撮っている人がいて、あれ? もしかして? と思い始め、やばい私も一緒に写真を撮りたい! となったのですが、声をかける勇気がなく、周りをうろうろ……。

すると、彼と一緒にいた関係者の人が「写真を撮りたいのかい?」と私に声をかけてくれ、「そうです!!!!!」と力強くうなずき、一緒に写真を撮ることができました! 幸せ……。この日は私の誕生日だったのですが、まさかホドロフスキーの映画を観ることができて、そのうえ役者さんと一緒に写真を撮ることができるだなんて……。日頃の行いがよいおかげですね。

ティム・バートンホドロフスキー

2作品を比べてみて気がついたのですが、ティム・バートンの作品はいわゆる娯楽で、ホドロフスキーの作品は己の創作意欲をかき立てるものになっていました。ティム・バートンの映画が娯楽として素晴らしくとても楽しめたのは言うまでもないのですが、ホドロフスキーの映画を観た日は、本当、芸術って素晴らしいなと実感させられた1日でした。アディオス!

ほぼ登山初体験の二人が雪山・ビジャリカ火山を登ってみた

Hola! すっごく久しぶりの更新になってしまいました……(反省)。今回はタイムリーな更新です! つい3日前にプコンにあるビジャリカ火山を登ってきました。まりあたんは屋久島で縄文杉へ到達する登山を一度経験しており、私は中学生の時に学校の授業の一環で軽い登山(?)をして、「高い! 怖い!(がくぶる)」と思った記憶があります。つまり、二人とも登山はザ・初心者。しかも、雪山の登山は初めてです。そんな二人が果敢にも挑戦した今回の登山。どんな結末を迎えたのでしょうか。ぜひ、最後までご一読ください。ビジャリカ火山の写真のみはこちら(ビジャリカ火山を(途中まで)登ってみた|無職|note)から。

古き良き田舎・プコンへ到着

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ビジャリカ火山の登山ツアーが数多くある街・プコンへ私たちが着いたのは、3日の朝のことでした。2日の夜に夜行バスに乗りサンティアゴを離れ、約10時間バスに揺られました。サンティアゴと180度景色が異なる、自然いっぱいのプコンはあいにくの雨。寒さにブルブルしながら、グーグルマップを片手にAirbnbで借りた家まで歩きます。約15分ほどで着くはずなのに、歩いても歩いても家が見当たらない。あー、もうこんなに寒いのに家が見つからないなんてぷんすこだぞ! と不機嫌になりながら、うろうろしていると、道端に止まっている車の中から男性が私に声をかけてきました。

男性「おーい! どうしたんだい?」(何を言っているのかわからなかったもの、雰囲気で脳内翻訳しました)

私「ここの場所に行きたいのですが、道がわからなくて……」

男性「あー、ここは……。うーん、あっちだよ、あっち! 〇〇ホテルの向かい側だよ!」

私「わっ! 本当ですか! ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」

と家の場所を教えてもらい、無事にたどり着くことができました。プコンの人はなんて優しいのだうるうる。今回、泊まる家は家主夫婦が住んでおり、空いている部屋を貸してもらうスタイルです。どうやってこの家の中に入ればいいのだろう(インターフォンがない)……と家の前をうろうろしていた私たちに家主が気づき、中に案内してくれました。家の中はとてもきれいです。部屋も小ぎれいでベッドは二つもある! いえーい! 大喜びの二人です。

部屋で一休みした二人は街へ出かけることにしました。目的は、ビジャリカ火山の登山ツアーに申し込むためです。地図でよく調べず勢いで街へ出てきてしまったので、また迷子になりました。道をうろうろしていると今度は、分厚い本を片手に持った顔立ちが日本人っぽい男性が声をかけてきました。

男性「なにか助けが必要ですか?」(英語で)

私「えっと、ビジャリカ火山の登山ツアーに申し込みたいのですが、ツアー会社がどこにあるのかわからなくて……」

男性「それならあっちだよ! 僕が案内してあげるよ!」

なんと、また優しい人に出くわしました。プコンに住んでいる人たちは素晴らしい人たちばかりですね。しかも彼は途中で日本語で私たちに話しかけてきて驚きました。それなりに上手な日本語です。聞くところによると、彼の祖母はブラジルに移住してきた日本人だそうです。なぜ彼が日本語を話せたのか納得です。ツアーに申し込む際の注意点(天候が悪くて登山ができない場合にお金が返ってくるかどうかなど)も教えてくれて、とても親切な人でした。

早速いくつかのツアー会社を訪ねてみます。最初の場所。

ツアー会社の人(?)「うーん、ここじゃなくて違うところのツアーがいいよ!」

ほへ?

違うツアー会社の人(?)「今は担当の人がいないんだ。明日来てくれ!」

え?

またまた違うツアー会社の人「ここは7000ペソよ!」

おおー! 三度目の正直! しかも安いぞ! 安くてテンションが上がった私たちはここで申し込むことにし、申し込みの書類(数枚)にリズムよくサインをしてきます。さて、残りはお金を払うだけ。どれどれ、二人で……。

え? 15万ペソ? ん? あれ? 一人7000ペソだよね? んんん?

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

そういえば、このツアー会社の人、さっき「英語で数字(値段)を言うのは苦手でね(てへぺろ)」って言ってたぞ。てことは、きっと7000ペソは7万ペソの間違いってことだ……。7000ペソだと思っていたものが、本当は7万ぺソだったと知り、二人は明らかにテンションが下がり、「ちょっと手持ちの現金がないので、お金下ろしてきますね……(本当)」と言い残りその場を去りました。そして、お金を下ろしてその足で違うツアー会社に行きました。

第四のツアー会社「7万ペソだよ!」

やっぱり、7万ペソが相場なのかな〜と思っていたところに、温泉プラス登山で8万ペソのツアー会社を発見しました。これはお得だ! と思い、そこで申し込むことに決めました。さっきのツアー会社には後ほどキャンセルの旨を伝えに行きました。少し申し訳なさがあったのですが、「キャンセル? おーけーおーけ! 全然大丈夫だよ!」といったテンションで返されてほっとしました。

温泉は登山の前日に行ったのですが、ここでは割愛します。いよいよ、登山の話に突入したいと思います。

登山当日

5日(土)の午前6時半。まだ街が眠っている時間にツアー会社に集合します。そこでバックパック、ヘルメット、サングラス、靴、アイゼン、ピッケル、手袋、ウェア上下を貸してもらいました。同じツアーに参加する人は私たちを含めて8人くらいいます。その中に、普段着のチェックのシャツに普段着のズボンを履いた男性がいました。とてもこれから登山をしますといった格好には思えません。ちょっとそこまで買い物に行ってくるねといったテンションの服装です。その上からウェアを着るとはいえ、その服装で大丈夫なのかこっちが心配になってきました……。

ツアー会社からバスが出発したのが7時すぎです(大抵、誰か遅れる)。そこから約30分かけてビジャリカ火山まで行きます。現地に着き、まずはリフトのある場所まで歩きます。

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ここの道には雪がないのでまだ余裕……かと思っていたら、疲れました。もうすでに疲れました。バスの中では「リフトは乗らなくていいよね! 歩くよね!」と話していた私たちですが、「リフト乗るよね? ね? 疲れたよね?」と意見が一致し、1万ペソ払ってリフトに乗ることにしました。

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いざ、リフトへ

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リフトに乗ると言ったはいいものの、怖い……。怖いよーーーーーーーーーーーーーーー。無理ーーーーーーーーーーーーーー。私たちは高所恐怖症です。荷物を前に抱えてぴょこっとリフトに乗った瞬間、恐怖が私たちを襲ってきました。死んじゃう。無理。怖い。

まりあたん「下を見ちゃダメだよ……」

私「う、うん……。写真撮ろうと思ったけど、無理だね、これ。身動き取れないね。怖くて死にそう」

まりあたん「ねっ……」

リフトの枠を握る手に力が入りすぎ、痛くなってきました。なんで私たちはリフトに乗ってしまったのでしょう。えっと、なんでだっけ? 怖すぎて何も考えられなくなりました。このリフトはどこまで行くのだろう。地獄まで……?

心がどっかに行ってしまいました。いつの間にか目の前にはリフトの降り場が。スキーやスノボーの板がある状態でリフトは降りたことがあるものの、己の体のみの状態でスキー&スノボー用のリフトを降りたことなどありません。失敗したら死んじゃう……。ネガティブな考えが頭をよぎりますが、降り口に係りの人がいて降りる補佐をしてくれていることに気がつきほっとしました。体を抱きかかえられながらすたすたすたっと無事に降りることに成功しました。よかった……。

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しかし、本当の試練はここからでした。

いよいよ、本当の登山開始

リフトを降りたということは、ここから雪山登山が開始されるということです。ガイドの人が注意点を話してくれました。転がったときは、ピッケルをこうやるんだぜ! などと……あぁ、転がることがあるのかなと少し不安になりました。

最初はみんなから遅れないように頑張って歩いていた私たちですが、数分もすれば前の人たちとの距離はみるみる開いていきました。雪山を登るのは予想以上に疲れる。というか、もう疲れた。頂上まで登るなんて無理だよ……。登山開始早々、私の心の中には諦めモードが漂っています。歩けば歩くほど、斜面の角度は大きくなり、足を滑らせて転がったら死ぬな、と思いました。

「滑ったら死ぬ。滑ったら死ぬ。滑ったら死ぬ」。まるで呪文のように唱え、細心の注意を払いながらゆっくりと登っていきます。途中でガイドさんが私たちの手を取りながら、優しく誘導してくれました。

もう何十時間歩いたことでしょう(おそらく数十分です)。ようやく最初の休憩地点に到着しました。着いて早々、私たちは、「無理だよね? これ以上登るの無理だよね?」とお互いの意思を確認し合い、「うん。無理」との結論を出しました。

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ガイドさんに「もう無理です。降ります」と伝え、降りるまでの間しばし休憩を取ります。そこから初めて目の前を見てみると、素晴らしい光景が広がっており、少しだけ感動しました(感動に恐怖が勝る)。

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 しばし休憩をしたところで、イケメンガイドが右手に私、左手にまりあたんという両手に花状態でさらに低いところにある休憩地点まで連れて行ってくれました。まりあたんによると彼は登山客に会うたびに「この子たち、死ぬほどビビってるよ!」と話しかけていたそうです。そうだよ!!!!!!!!!!!!!! 死ぬほどビビってるよ!!!!!!!! 転げ落ちたら死んじゃうもん!!!!!!!! くぅううううううううううう!!!!!!! ちなみに、下山するときにアイゼンをつけてくれたのですが、登るときにもつけてほしかったです……。

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これがあるのとないのでは、だいぶ滑りが違います。最初からこれをつけていれば、もう少し登れたかもしれないのに! と私たちはぷんすこしました。ぷんすこしながらも楽しそうな写真はばっちり撮ってもらいました。f:id:en_chile:20161108224144j:plain

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そんなこんなで、彼と手をつなぎながら、無事に休憩地点に着き、ここでガイドはおじさんガイドに交代みたいです。頼もしそうなイケメンガイドがぽっちゃりおじさんに……大丈夫かな。イケメンガイドはちゃっかりおじさんガイドにも「この子たち、死ぬほど怖がっているからよろしくね!」と言っていました。くぅうううううううううううううううう。さらに、その休憩地点にいた下山予定の女性が「この子たちはどうしたの?」とイケメンガイドに聞き、「あぁ、この子たちは死ぬほど怖がっているから下山するんだぜ!」と、「死ぬほど怖がっている」を連発する彼。

まりあたん「そんなに言わなくてもいいじゃん!!!!!!ぷんすこ」

はい。死ぬほど怖がっている私たちは、おじさんガイドとその女性とともに再び下山を始めます。さっきよりは緩やかになってきた斜面。どんどん進みます。疲れます。疲れました。下るのは大変やぁ……。

こんなに楽しいソリは初めてや!

数十分下ったところで、いよいよソリ(?)の出番です! ソリといっても、ただのプラスティックの板です。それの上にお尻を乗っけて、山をすいすい下山するのです。プラスティックの板で下山するには少し急斜面な気がしますが、そんなことは関係ない! もうコースができているからそこに沿って滑ればいいだけ。おじさんガイドが先頭で、その次が私、そしてまりあたん、さっきの女性という順番です。

ポケットにしまっていたカメラはバックパックの中にしまうように言われたので、残念ながら滑っているときの写真や映像はありません。しかし、結論からいうと、とっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっても楽しかったです!!!!!!!!!!! 滑り初めは少し怖かったのですが、慣れてくると、もうびゅんびゅんとスピードを出して滑ることができます。びゅんびゅんびゅん〜すいすいす〜〜〜〜〜いっと。4人でくっついて滑ってみたりもしてとても楽しかったです! 恐怖の登山の最後に、こんなに楽しいことが待っているとは思わず、神に感謝ですね。

ソリ(?)で土の地面付近まで滑り、そこから先は徒歩で車のあるところまで歩きました。小屋で少し休憩し(おじさんガイドと女性がたそがれていた)、車に乗ってプコンに戻り、今回の登山は無事に終わりを告げました。

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濡れたウェアを乾かす(登山玄人ぽっい)。ちなみに、右下にある緑色のプラスティックがソリ(?)です。

家までの帰り道、障害者の人が提供するパスタ屋が開催されていたので買ってみました。パスタと飲み物がついて2000ペソで、そこそこおいしかったです(ソースが少し足りなかった)。結構人が並んでいて、やはり海外の人はこういったことにも進んで参加するのだなと思いました。

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さて、終わりよければすべてよし! 次回の登山予定は永遠に訪れないかもしれませんが、今日は大満足な1日でした! アディオス!

チリ・サンティアゴの美容院(仮)で髪を切ってみた

人生の鑑

Hola! 先日、街をふらふらと歩いていると以前工事中だった場所に新たな露天市場(?)ができていました。主に、小物屋さんや食事処、ネイルサロン(仮)、美容院(仮)などがありました。「(仮)」とついているのは、建物の室内ではなく、外で施術をしているので「サロン」や「院」といった表現が適切かどうかわからないからです。

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露天市場をぐるっと一回りして、アボカドがたっぷりつまったパンやマフィンを買って腹ごしらえをします。おいしい、おいしいとバグバグ食べていると、外から誰かの歌声が聴こえてきます。声のするほうに行ってみると、人がイヤホンをしながら一人でノリノリで歌っていました。

よくある、歌を歌って投げ銭を受け取るタイプの人ではなく、ただたんにノリノリで大声で歌を歌っているだけです。後ろのお店の店主に貸してもらったであろう椅子に座りながら、大勢の人が通る道の端っこで、人目もはばからず、目をつぶりながら、体を揺らしながら、足を組みながら、とにかく大声で歌っているのです。

太い声でしっかりと歌っています。まるで、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のヘドウィグのようです。そうです。彼(あるいは彼女)は、生まれたときの性別はおそらく男性で、今は女性の格好をしているのです。ただの女装なのか、あるいは、MtF(生まれた時の体の性別は男性で、女性になりたい人)なのか、はたまた別のものなのか……真の正体は謎に包まれたままですが、彼(あるいは彼女)はとてもかっこいいです。

自分ワールドにこもり、堂々と歌っているその姿に感銘を受け、一緒に写真を撮ってもらいたかったのですが、あまりにもノリノリで歌い続けているため、声をかけるタイミングがありません……。泣く泣く、こころの中で投げキッスをしてその場を去りました。

チリで初めての断髪

帰り際に男性向けの美容院(仮)を眺め、「あの髪型いいね」などとまりあたんと一緒に話していると、そこにいたおばさんがこっちに向かって何か言ってきました。どうやら、「髪を切らないか?」と勧誘してきたようです。

え! 今からここで?! そろそろ髪を切りたいとは思っていたのですが、スマホを家に置いてきてしまったので、やりたかった髪型の画像が手元にありません。口頭とジェスチャーで伝わるかな……と不安に思いましたが、家までスマホを取りに戻るのは面倒くさいので、1秒だけ悩んだ末に、「やります! 切ります!」と力強くおばさんに伝えました。

まりあたんが「こういう髪型にしたいの〜」とおばさんに概要を伝えてくれ、おばさんも「OK. OK. そのくらいお安い御用よ」と言わんばかりの顔で私の髪の毛をじろじろと見てきます。

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いざ、椅子に座り断髪式の開始です。まず、バリカンで思いっきり髪を刈っていきます。まりあたんがここで「すごい。ライン取りしてないよ」と驚いた声を上げます。日本の美容師なら、髪留めを使い、刈っていく部分がぶれないように丁寧に刈っていくのですが(まりあたんに教えてもらいました)、このおばさんはそれはもう豪快にどんどんバッサバッサ刈っていきます。

私の髪の毛がなくなっていく〜と思いながらも、もう心は決まっているのでひたすら静かに出来上がりを待つのみです。

隣の若そうなお兄さん美容師はようじを口にくわえながら、時々ノリノリで歌を歌いながらカットしています。お客さんの髪型がとてもかっこよくて、腕の良さそうなこの美容師にカットしてもらいたかったかも……と内心思いました。

椅子をくるくる回されながらひたすら髪を刈られる私。バリカンが終わったら今度はトップのカットに移ります。ハサミで豪快にジョキジョキカットしていきます。豪快すぎて「ジョキジョキ」の音が本当に聞こえました。その音が私の不安を増大させているとも知らずに、ひたすら続くジョキジョキの音。数分後、ついにその音が終わり、それとともにカットも終わったのかと思いきや、今度はバリカンで髪の毛をすき始めました。その瞬間、私の心の中には「やばい」「終わった」という言葉しか出てこなくなりました。

バリカンで髪の毛をすかれるなんて経験は初めてのことで、髪の毛が泣いています……。私には聴こえるのです。大切な髪の毛たちのすすり泣きが。「痛いよぉ〜。痛いよぉ〜うぅ……」と。そんな髪の毛たちに「大丈夫だよ。もうすぐ終わるからね」と声をかけ、なだめている間にもどんどんすかれて短くなっていく私の髪の毛。どんだけ短くするのだ……! と私まで目から涙が出そうになってきた段で、よやくおばさんの手の動きが止まりました。

出来上がった髪型は……?

カットの時間は約30分でしたが、私には24時間くらいに感じられました。最後にウエットなワックスをつけて終わりです。無事に(?)出来上がった髪型はこちらです。

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お、おぉ……。こういう人いるよね……。これで4000ペソ(約623円)です。1000円カットよりも安い! そして早い! 値段と時間を考えれば納得できるクオリティですね。もっと高くてもいいから、遅くてもいいから、腕のいい美容師に出会いたかった気持ちは少しだけありますが……。でも、短くカットしてくれてすっきりしました。チリはこれから夏なので、短い髪の毛で暑さを乗り越えようと思います。ポジティブ、前向き大事! 

不満な点は?

と言いつつも、のちにチリで髪を切る人のために主な不満な点を2点だけ書きます。不満な点は、後頭部の生え際が左右対称ではなかことと、前髪を流した方向がなぜか長い方から短い方へだったことです。一見ささいなことですが、髪の毛命の私にとっては死活問題です。生え際は、美容師免許を持っているまりあたんに手直ししてもらい、こんなにきれいになりました。ブラボーです!

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変な前髪は自分でぺっぺっと自然な方向へセットし直して、無事に事なきを得ました。ちなみに、まりあたんが手直ししている間、遊び心のある写真をひたすら撮ってましたぺろっ。では、アディオス!

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権化との出会い。そして、私を襲ったものとは? 〜VICHYのBBクリームをめぐる攻防〜

Hola! 今日はチリでの面白い小話をいくつか書きたいと思います。っと、最後まで書き終えたら、一つの話が普通の長さになってしまったので、今回は一つの話だけお楽しみください。

恐怖のショッピングセンター編

あれは、サンティアゴのManquehue駅の近くにあるショッピングセンターで二人で化粧品の買い物をしたときのことです。皆さんご存じの化粧品会社ロレアルの子会社であるVICHY(ヴィシー)の商品を私たちは買おうとしました。目当てはBBクリームです。私だってBBクリームくらい塗ります。それどころか、最近はうっすらお化粧までしています。チリに来て美意識が高まりまくりです。

VICHYの販売場所には、まるで権化かと見間違うほど優しい表情をした販売員がいて、とても丁寧に商品について説明してくれました。多分、私がかわいかったからだと思います。

「これはオイル肌向けで、これは乾燥肌向け、そしてこれは混合肌向けだよ。試してみるかい?」

ここで、パティシエがケーキにホイップクリームをちょこんと出すさまを思い出してください。あの様相で彼が私たちの手にBBクリームを出してきたのです。華麗な動きで、優しく、繊細に、飛び出してくるBBクリーム。それを私のガビンガビンの肌と、まりあたんのツルツルピカピカの肌で受け止めます。オイル肌向け、乾燥肌向け、混合肌向け、それぞれ違った味わいがあり、muy bien(とてもよい)です。渇きを失った肌が喜んでいます。

「うーん、色がねぇ……」

唸りを上げるまりあたんの声が隣から聞こえてきました。まりあたんの肌は雪のように白いので、BBクリームの色に納得がいかないようです。どれが自分の肌に合うか迷っていると彼が、

「こっちもあるよ」

と言い、違うBBクリームを出してきました。先ほどとは一味違った華麗な手つきで私たちの手に次々とクリームを乗せていきます。なんとこの2つのBBクリームは、SPF50で、紫外線のUVBとUVAを防いでくれます。大まかに書くと、UVBは日焼けの原因となる紫外線のことで、UVAはシミやシワの原因となる紫外線のことです。美肌美人を目指している二人にとって、シミやシワは敵です。とても大きな敵です。二人ともこの商品を買うことにしましたが、肌触りがサラサラのもととゴワゴワのものがあります。

私はサラサラが気に入り、まりあたんはゴワゴワキャピキャピが気に入りました。早速、彼にこれらの商品を買いたい旨を伝えます。

「これとこれをください」

「おーけ。これとこれだね。ちょっと待ってね」

私のスペイン語が伝わったようです。一安心です。数十秒後、彼の手に握られている二つのパッケージが目に入りました。よく見てみると、二つとも同じ種類のBBクリーム。まりあたんが買いたいと言っていたほうです。

「えっと、私はこのBBクリームが欲しいのですが、これは違いますよね?」

と勇気を出して言ってみたものの、彼はやはり権化のような顔で、

「大丈夫だよ。これはこれだからね」(私が欲しい物)

と言ってきます。私が手に持っている試供品の名前と彼が持ってきたパッケージに書かれている名前が明らかに違うにもかかわらずです。

「いやいや、違うって」

「いやいや、大丈夫だって」

「いやいやいやいや、違うって」

「いやいやいやいやいや、大丈夫だって」

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやあああああああああああああああ」

もう何も考えられなくなった私は、パッケージの名前は違うけど、中身は私が欲しい物なんだと思うことにしました。そうだ。権化が「大丈夫」って言っているんだ。権化だよ、権化。権化とは、「仏・菩薩 (ぼさつ) が人々を救済するために、この世に仮の姿となって現れること。また、その仮の姿。化現 (けげん) 。権現 (ごんげん) 。化身」(出所「goo辞書」)という意味ですから、仏が私をあざむくわけがありません。あの優しい笑顔の裏に、世にも恐ろしい顔があるとは思いません。大丈夫。パッケージは違うけど、中身は私が欲しかった物。大丈夫。パッケージは違うけど、中身は私が欲しかった物。大丈夫。パッケージは違うけど、中身は私が欲しかった物。

呪文のように幾度も心の中で唱えながらお会計を終えました。一刻も早く家に帰り中身を確かめたかった私は、ショッピングセンターから家までワープしました。これは己の体を犠牲にすることによって使える技です。今回は右腕を持っていかれましたが、大丈夫です。そんなことより私は早く中身を確認したいんだ。

正座をして、背筋を伸ばして、例の商品を目の前に置きます。まず、一礼。商品に優しく語りかけます。

「おまえは、パッケージは違うけど、中身は私が欲しかった物だよな」

その瞬間、商品が深く息を吐き、「うん」とつぶやくのを私は見逃しませんでした。よし。大丈夫。これで安心して中身を確認することができます。生まれたての赤子に接するように、パッケージのふたを優しく撫で、指でぐっと押し、空いた隙間に指を差し込み、ふたの一端をつまみ、上に持ち上げます。いよいよご対面です。私が欲しかった物と。まさに、中から出てきたものは私が欲しかった……? 私が欲しかった……? え? 私が欲しかった……。f:id:en_chile:20161014072045j:plain

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

これは私が欲しかった物と違ううううううううううううううう。いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

終わり

チリ・サンティアゴで初めてのサーカス観戦

Hola! 「しばらくブログ見てなくてまた溜まっているかも…!って思ったらそんなになかった笑」って友達に言われためぐたんです! これからドバーーーっと更新しますよー! 書きたいことはたまっているけれども、ゆったりと流れるチリの時間に身を任せていたら、いつの間にか時が経っていたのです。実に6日ぶりですね。私が急死に一生を遂げたあの日から……。

あれ、今、冷静になって文字を眺めてみたら、「急死に一生を遂げた」ではなく、正しくは「九死に一生を得た」だと気がつきました。くっ。私としたことが……。まあ、それほどあの時は死にそうだったということです。(参照「チリ・サンティアゴで急死に一生を遂げる - en_chile’s diary」)

今ではもう傷口はすっかりふさがり、あとは表面の裂けた皮膚がくっつくだけで完治です。治りが早い自分の治癒力に感動しました(決して傷が浅かったわけではないです。傷は海よりも深かったのですから)。

日曜の午後、サーカスへ行く

今日はサーカス体験記を書きたいと思います。マンションの近くに『ダレン・シャン』に出てくるようなサーカスの(簡易? 一時的な?)施設ができており、興味をそそられたので観ることにしました。

土日は午後4時、6時、8時の3回公演で、月曜と火曜(?)は6時、8時の2回公演です(確か)。私は日午後6時の回を観ることにしました。外出したときはいつもこのサーカスの前を通るのですが、大抵、人がまったくいないので、このサーカス大丈夫かな? と不安に思っていたのですが、午後6時前に行ってみたらなんと大勢の人が……!

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チケット売り切れていないかな、大丈夫かなと心配しながらチケットカウンターに向かうと、大丈夫でした。無事チケットを買えました。一番安い席から6000ペソ、7000ペソ、1万ペソ、4人掛けの席が6万ペソです。私は奮発して一人用の席では一番高い1万ペソのチケットを買いました。

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会場の中へ入る列が3つに分かれていて、どこに並べばいいのかまったくわからなかったのですが、私は並んでいる人の手に着目しました。私と同じチケットを持っている人がいる列に並べばいいのだと。私、天才。どうやら、真ん中の列が高い席を買った人が並んでいる列のようです。

並ぶの結構後ろになっちゃったなぁ、と思いながら一人でしょんぼり並びました。そうそう、まりあたんはいません。サーカスに興味がないようで家でお留守番です。いい子にしているかな。家の中を汚くしていないかな、大丈夫かな。誘拐されていないかな。などと、考えていたら、開場したようで列が動き始めました。

これがザ・サーカス

施設の中に入ると、最初はこんな感じになっています。なんだかサーカスっぽいですね。っぽいではなく、サーカスですが。

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そこからさらに歩き進めてステージのある場所に到着です。前の席からすぐに埋まるのかな〜と思っていのですが、案外そうではなく、最前列や2列目、3列目が結構空いていました。私は、2列目に座ることにしました。もし、最前列に座ってサーカスの人に絡まれたら嫌だと思い……だって、スペイン語しゃべれないんだもん。か弱い女の子だもん。

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席は満員ではなく、サイドには人がいませんでした。結構並んでいたはずですが、皆さん、真ん中に集結したのですね。午後6時すぎ、いよいよ開演です。まず最初に小さな少年が出てきて、会場が和みました。うまく技ができていないのがさらにかわいいです。スマホの大きな模型という小道具も出てきました。画面に「Evernote」や「WhatsApp」のアイコンがあったことを私は見逃しませんでした。細かいことろまで手が込んでいます。

その後は、普通にサーカスでした(今までサーカス観たことないけど)。縄を使って空中を飛んだり、軟体人間が出てきたり、コメディアンらしき人が出てきて会場を笑わせていたり(何を言っているのかさっぱりでした)。ライオン人間や、口から火を噴く人、頭から蛇がうじゃうじゃ出ている人などは出てきませんでした。異世界へワープできると思ったのに残念です。

途中で写真を撮る人がまわってきたのですが、私の右隣の家族をパシャりと撮って、私をスルーして、左隣にいる家族をパシャりと撮っていました。私だって、一人だって、写真を撮ってもらいたかったのに!! 一人で来ている人はおそらく私くらいだったのですがね。みんな家族連れ、小さい子供連れでした。何歳になっても私は子供の心を忘れません。一人だって楽しいのです。子供だから。

大の一歩手前の満足

途中で休憩を挟み、約2時間の公演が無事に終了しました。初めてのサーカスは十分楽しめました。チリ人のノリってすごいなって思ったり。結構盛り上がっていました。出演者から促された手拍子はまったく続かなかったけど。日本だったら、一度手拍子が起こればしばらく続くと思うのですが、チリ人は疲れやすいのでしょうか。「盛大な手拍子→だんだん小さくなる→なくなる→出演者に促される→最初に戻る」。このサイクルを永遠と繰り返していました。省エネチリ人。

会場にはわたあめも売っていました。「ワタアメ〜〜〜!」(「ア」にアクセント)とひたすら叫んでいたように聞こえました。買いたかった……。

おそらく家で良い子に待っているまりあたんには何もお土産を買わずに、終演後はそそくさと会場を後にしました。ちなみに、今もまだサーカス軍団はいます。いつまでここにいるのだろう。旅するサーカス軍団だと思ったのに、ここに永住するのかな?! それではアディオス!

(一眼レフで公演中もバシバシ撮っていいとは夢にも思わず、コンデジしか持ってこなかった&開演前しか撮らなかったので写真が荒い&少ないのはお許しを!)

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