南米's diary

2016年9月〜2017年3月頭まで南米を旅する無職な二人の愉快な日記。

トラップ多発。世界最南端の都市・ウシュアイア

もう3月だ。あれから約6カ月がたった。明日にはもう飛行機に乗り、米国経由で日本へと帰る。パスポートが私の手元からいなくなったあの時、ブログを書くことを少し中断しようと思った。そう、少しだけのはずだったが、もう3月だ。ウルグアイからアルゼンチンへと移動し、パタゴニア地方を存分に楽しみ、チリに戻ってきたのが約1週間前。パタゴニア地方でのことを、これからのブログに書くかどうかはわからないが、とりあえず以下の二つのことだけは伝えておきたい。

1. エル・カラファテからウシュアイアへのバスで、トイレに閉じ込められた事件
2. ウシュアイアからプンタ・アナーレス(あるいはプエルト・ナタレス)行きのバスは火曜日しかない

トイレ閉じ込め事件

何時間もバスに乗っていると何回もトイレに行きたくなるのは人間のさがである。最初にトイレに行った時、ドアの内側に取っ手がないことに気がついた。なんだかやばそうだと思い、ドアは半開きに。バスの揺れで何度もドアが開いたが、乗っている人が少なかったため(私とまりあたんを含め5人)、誰にもトイレ中の姿を見られることなく用を足すことができた。

もうすぐウシュアイアに着く頃にもう一度、最後のトイレに行っておこうと私は席を立った。そして、トイレのドアを完全には閉めないように注意しながらドアを手前に引くと……ガタンッ! バスの揺れで完全に閉まるドア。やばい、と思ったが用を足すことが最重要課題である。完全に閉まったドアを見つめながら、ふぇ〜と。さて、ドアを開けるかな、となった段で……やっぱりね。はいはい。開かないですよね。だって、取っ手がないんですもんね。

コンコンコンコン。ドアをノックしてみる。この音に誰か気がついてくれないかな、と。ひたすら、コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン……。拳が赤くなるほど叩いたにもかかわらず、誰も気がついてくれない。

こうなったら実力行使だ。ドアを手で思いっきり押すことに。ドンッ! ドンッ! ドンッ! ダメだ。びくともしない。次は、ドアを蹴る。ドスッ! ドスッ! ドスッ! あっ、ドアの下部が壊れそうだ。壊したらやっかいなので、蹴ることを断念。いやー、それにしても開かないな。でも、こんなに狭いトイレの中に閉じ込められるのは耐えられない。ありったけの力を込めて全身でドアに突撃。ドスーン! ドスーン! ドスーン! ダメだ……。

疲れ果てた体を少し休ませ、最後の手段として、大声でまりあたんの名を呼ぶことにした。ソフト部で鍛えた声量(グラウンドの端から叫んで、100メートル以上離れている反対側にいる人まで聞こえるような大声を出す練習、みんなしたよね?)を、約10年近くぶりにここで発揮することになるとは……。感慨深いなぁ。あの頃の私は……おっと、昔の思い出に浸っている場合ではない。早く大声を出してまりあたんを呼ばなければ。せーの!

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

……。一向に来る気配のないまりあたん。あやつめ、多分、イヤホンで音楽を聴いているな。くっ。まだまだ!

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「まりあたーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……ん……」

はぁ、はぁ。も、もうダメだ……。もう私はこのトイレの中で死にゆく運命なのだろう。こんなに狭くて、少し汚いトイレの中で私は死ぬ。一番行きたかったウシュアイアに到達する前に死ぬ。死んでトイレの妖精になる。妖精になったら……

ドスッ!

お?

私の目の前には突然、開いたドアが。そして、一人の男性が立っていた。おおおおおおおおお! この人は一緒にバスに乗っていた人ではないか! 日本人のような顔をしていて、日本人なのかそれとも他のアジア圏の人なのか見分けがつかないなぁ〜などと思っていた人ではないか!

「ありがとうございます! あっ、Thank you!」

日本人ではない可能性も考慮し、世界共通単語の「Thank you」を付け加えておいた。助かった……。ぎこちない笑顔の男性、いや私の命の恩人よ。ありがとう!!!!!!!!!!!

席に戻り、まりあたんに「トイレに閉じ込められたよ! ぷんすこ! まりあたんの名前をひたすら呼んだのに! でも男性が助けてくれたよ!」と報告し、うきうき気分でウシュアイアへ着くのを再び待つ私。ちなみに、「トイレのドアは完全に閉めちゃダメだよ!」と、忘れずに伝えておいた。

しばらくすると、まりあたんの声が後方から聞こえてきた。「めぐたん! 私も閉じ込められた(笑)」と。振り返ると笑顔のまりあたんがいた。

ま「あの男性に助けてもらったよ!」

私「私もあの男性に助けてもらったんだよ!」

ま「同じ人か!(笑) なんの言語でお礼言ったらいいのかわからなかったから、とりあえず『ありがとうございます』と『Gracias』って言っておいた!」

私「私と一緒じゃん(笑)。私は『Thank you』にしたけど!」

二人とも同じトイレに閉じ込められ、同じ男性に助けられる。実に良い話だ……うぅ。とまあ、「バスの内側に取っ手がついていないドアは完全には閉めてはいけない」ことを声を大にして言いたい。ちなみに、あの男性は日本語が少ししゃべれる(日系?)ブラジル人だった。後日、ウシュアイアの街中で出くわしたときに少し会話をした。

プンタ・アナーレス行きのバス

私たちはウシュアイアからプンタ・アナーレスにバスで移動する予定を組んでいた。ウシュアイアに到着した数日後の土曜日、バスのチケットを取りにオフィス(営業時間は夕方から夜まで)へ行くと、なんとプンタ・アナーレス行きのバスは火曜日しかない、と(私たちは月曜日にウシュアイアを出発しようと思っていた)。そして、残っている座席は二つだけだった。

バスの本数は、火曜日に1本しかないのか、それとも他の時間帯の便はすべて埋まっていたのか、どちらなのかよく確認しなかったのだが、確か1本だけだったような気もする……。そうなると、バスのチケットは争奪戦になるので、早めに取ることをお勧めする。

また、土日は銀行業務がやっておらず、ATMへの紙幣補充がなされない。そのため、観光客が多いウシュアイアでは土日は皆、ATMから大量にお金を下ろすので運が悪いと紙幣がなくなり、お金が下ろせなくなる事態が発生する(私たちは日曜に下ろそうとしたら、どこのATMからも下ろせなかった)。それに加え、手数料が高すぎるので(1万アルゼンチンペソ下ろすのに半分近く手数料が取られる)、ウシュアイアに行く前に現金は用意しておいたほうがいい。

世界最南端の都市・ウシュアイア。いろいろと予期せぬトラップが仕掛けられているので、用心して観光を。f:id:en_chile:20170302040736j:plain