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南米's diary

2016年9月〜2017年3月頭まで南米を旅する無職な二人の愉快な日記。

チリ・サンティアゴで急死に一生を遂げる

チリ_サンティアゴ

お、おら……(元気がない)。そう、今の私は元気がありません。タイピングする指、手、腕にまったく力が入りません。キーボードに優しいソフトタイピングです。ついでに、心にもまったく力が入っておらず、ぽかーん(真っ白)としているのですけどね……。私の心が真っ白に、空っぽにさせた事件の顛末をこれから書きつづりたいと思います……。あぁ、思い出すだけでもう、私は……。

あの事件が起こったのは、お昼ご飯を作っている最中でした──。

「めぐたーん、私がお風呂入っている間にうどん茹でて!」

まりあたんの元気な声が部屋中に響き渡りました。どうやらお昼ご飯はうどんのようです。まりあたんが作るうどんはおいしいので、心を弾ませながら、

「おう!」

と応えました。まず、お湯を茹でます。水ではなく、お湯を入れて茹でるのがポイントです。まりあたんから教えてもらいました。鍋にたっぷりとお湯を入れ、「強」に温度設定したIH調理器の上に置きます。

十数分後、ぶくぶくと沸騰……はしていないのですが、まりあたんがお風呂から出てきたため、うどんを入れることにしました。量は適当です。茹で時間は8分ですが、その2分前に出してと言われていたので、6分待ちます。勉強をしていると時が経つのはあっという間ですね。あやうく、1時間くらい経ちそうな勢いでした。

鍋のほうを見ると、服を着終えたまりあたんがうどんの蓋を取り、うどんの茹で具合を確認しています。もう取り出していいそうです。私は鍋の元まで行き、熱々の蓋を取り外します。これに当たったら火傷をしてしまう。そう思った私は、その蓋を水で冷やすことにしました。水道の蛇口をひねり、熱々の蓋に水をかけると……

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「パーン」という爆発音とともに、蓋が粉々に破裂しました。突然の出来事に何が起こったのか把握できず、呆然と立ち尽くす私の横でまりあたんが、

「そりゃそうでしょ」

と薄笑いながら言い放ちました。え……? あれ……? え……? あっ、そうか! この蓋はガラス製です。「熱いガラスに冷たい水をかけると破裂する」。そういえば、そんなことを聞いたことがあったような……などと考えを巡らせていると、蓋を持っていた手の親指からだらだらと血が出てくる光景が目につきました。どうやら、飛び散ったガラスの破片が私の可憐な親指のハートを射抜いたようです。鋭い弓矢が親指のハートに刺さったため血が止まりません。洗い流しても洗い流しても、とめどなくあふれてくる血。つらいときに涙が止まらない現象と同じです。どうしよう……。私、このまま死んじゃうのかな? チリで死ぬのかな? と本気で心配していると、

「止血しなよ」

と氷よりも冷たい声が聞こえてきました。そうか、止血をしなければ。私の貴重な血をこれ以上流させるわけにはいかない。トイレペーパーで傷口をぐっと抑えます。でも、傷口を抑えるとどんどん血が出てくるよね? やっぱり、私死んじゃうの? と疑問に思っていると、

「傷口じゃなくて、その少し上を抑えるんだよ」

と再び氷よりも冷たい声が聞こえてきました。こやつ、ただ者ではないな。なぜそんなことまで知っているのだ、と感心しながら私は傷口の少し上を抑え始めました。なんだか右手に血の気がない。力が入らない。やっぱり、私死んじゃうのかな? なんかちょっと気持ち悪いし……。出血多量で死んじゃう? 病院行くの? 縫うの? 嫌だよ……。痛いのは嫌いなんだよ……。というかもう、指を切ったショックで死にそう。私が怪我で死ぬときはその怪我のためではなくて、その怪我を負ったショックで死ぬと思う。無理、親指を1センチ少々切っただけで、もうショック死しそう。怖いよぉ……などと、いろいろと頭の中で考えていると、再びあの声が聞こえてきました。

「傷口にガラスの破片入ってない? 入ってたら取るんだよ。もし取れなかったら病院で取らなきゃだし。アルコール消毒する? 白ワインだけど」

と、傷の対処の仕方を教えてくれました。病院でガラスの破片を取るところを想像したらもうそれだけで痛くて死にそうになったので、「どうかガラスの破片がありませんように」と祈りながら傷口を見てみました。血がうっすらとついている傷口。ガラスの破片はないようでした。よかった……。消毒は痛いのでしません……。想像するだけで痛くて死にそうってさっきから書いているでしょ! 無理なの! 清潔に水で洗ったから大丈夫だもん。

冷徹な声の持ち主・まりあたんは生活する中で怪我をたくさんしてきたそうで、怪我には慣れているみたいです。料理も小さい頃からやってきて、切り傷や火傷はお手の物。かたや、四角く分厚い箱に入れられて育ってきた私は、料理などほとんどしてこなかったですし(一人暮らしで簡単な自炊をしたり、調理のバイトをしたりしたことはあります)、部活をやっていても大きな怪我などしたことがなく、本当に怪我とは無縁の生活だったのです。唯一の大きな怪我といえば、小学生の時に指をハサミで切ってしまい、病院へ行って縫ったことです。そういえば、主治医に「立派な眉毛だねぇ〜。将来、剃ったりしないほうがいいよ〜」と言われたなぁと思い出しつつ、まりあたんに、

「ぬ、縫ったりしなくて平気かな……?」

と死にそうな声で聞いてみると、

「そのくらいの怪我なんて平気でしょ」

と平然とした声で返されました。そ、そのくらいのけ、怪我?! ゆ、指を1センチ近く切って、血をだらだらを流したのに、そのくらいの怪我?! 

「私なんて3センチぱっくり切っても放置してたら治ったし」

やばい。どうやら、まりあたんは私と住む世界が異なる住人のようです。異世界から来た勇者なのかもしれません。頼もしいのやら冷徹なのやら……。そんなことを考えていると、死にそうな気持ちが少しだけ回復してきました。止血した傷口に絆創膏を貼る体力が出てきてたので、ぺっぺっと貼り、飛び散ったガラスの後始末をすることにしました。

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床に落ちているガラスの破片をベランダにポイっと捨て、シンクにある鍋蓋とガラスの破片を袋に入れゴミ捨て場に持っていき(まりあたんが3分の2をやってくれました。ありがたや)、無事に後始末は終了です。それとともに、お昼の大盛りうどんも出来上がりました。さっきは、本当に死にそうで、食欲などなかったのに、まりあたんのおかげ(?)で食欲が戻ってきました。いつもより甘めにしたうどんの汁はとてもおいしかったです。

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ひょっとしたら、死にそうな出来事を経験したからこそ、何気ない食事がとてもおいしく感じられるのかもしれません。生きていることに感謝ですね。天からいつも見守ってくださっているお方へ、私を守ってくださりありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

追伸:このあと、母親にLINEをしたら電話がかかってきて、「大丈夫?」「病院行った?」「縫わないの?」「私が切ったときは縫ったんだよ」「破傷風になったら大変だよ」(破傷風のワクチンは打ちました)と過度に心配されて(このような環境で育ったため私は心配性なのかもしれません)、再び不安で死にそうになった私でした。