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南米's diary

2016年9月〜2017年3月頭まで南米を旅する無職な二人の愉快な日記。

トイレはブラックホール

ボリビア_ラパス

Hola! 今日は少し重大な内容のブログです。きっと、誰しもに訪れる危険を身をもって体験した私の体験談を載せたいと思います。命拾いしたければ、ぜひ読みましょう。

ボリビアからパラグアイへと移動

つい数日前、私たちはペルー・プーノからパラグアイアスンシオンへと移動をしました。プーノのはペルーの一都市ですが、首都・リマや第二都市・アレキパと比べると、気温はとても寒く(本当に凍えるほど寒かったです)、町の風景はボリビア・ラパスに似ているものでした。

プーノに数日滞在し次に向かった場所は、パラグアイアスンシオンです。まず、プーノからボリビアとの境界線になっているチチカカ湖まで大型バスで3時間かけていきます。チチカカ湖に着き、船で湖を横断し、そこからラパスに行くために今度はおんぼろな大型バスに乗ります。おんぼろで道もガタガタなので酔います。当初の予定より時間は延び、プーノから合計で約7、8時間かけてようやくラパスに到着しました。

見慣れたはずのバスターミナルに着くと思いきや、着いた場所は、まったく見知らぬ場所。どこかの道路の端っこです。早くバスターミナルに行き、ボリビアサンタクルスまでのバスチケットを取らなければならないのに、どこだかわからない場所に降ろされてしまいました。本当はお金を使いたくなかったのですが、仕方がないのでタクシーを使ってバスターミナルまで移動します。

バスを追いかける

タクシーに乗ること約10分。無事にバスターミナルに着き、私は荷物係、まりあたんはチケットを取る係と役割分担し、素早く行動しました。まりあたんが数カ所に値段を聞くもどこもどっこいどっこい。しかし、最後に聞いた会社でなんと破格の価格が!!!!!!

だいたい一人200ボリビアーノオーバーの値段だったにもかかわらず、180ボリビアーノがきました! バスの時間が迫ってきているので(正確にはもう過ぎていますが)、席を埋めたいがためにここまで値下げしてくれたのです。まりあたんはチケットの手続きをし、私は急いでATMにお金を下ろしにいきます。

ものの数秒でチケット会社の受付カウンターに戻ると、まりあたんが「早く! 早く! お金渡して! ここから(受付カウンターをくぐり抜ける)入っていいって!」と言っています。まりあたんが係りの人に聞いたところ、荷物をバスに積むのはもう間に合わないから(発車しているから)次の便で送る、と。バスを降りたところで待っていれば大丈夫だ、と。

というわけで、荷物は係りの人に預け、私たちはバスを追いかけているもう一人の係りの人の後を猛ダッシュで追いかけます。ここは標高約3600メートルのラパスです。そんなところで猛ダッシュする私たち。私は重い荷物とずり落ちそうになるズボンを手で押さえながら走ります。はぁ、はぁ……。疲れた……。

トイレはない

走ること数分、ようやくバスに追いつきました。ちなみに、私たち以外にもバスを追いかけ走るおばあちゃんたちがいて、強いな、と思いました。バスに無事に乗り込み、ほっと一安心。私は迫り来る尿意のため、息も絶え絶えにすぐさまトイレに行きます。まりあたんが係りの人に聞いたところ、トイレはちゃんとあるそうなので大丈夫です。

2階から1階に行き、トイレのドアを開けようとすると……え? 取っ手がない?! 本来あるはずの取っ手部分がなくなっており、金属がむき出しになっています。これで開くのか、一抹の不安を残しながらも、むき出しの金属を握り、引っ張ってみると……開かない。まったく開きません。まあ、この状態で開くわけないですよね。

と、1階の最前席に座っていたおじさんが私に何か話しかけてきました。

お「ぺらぺらぺらぺらーーーーーーーーーーーーー」

私「?????????????????????」

あまり聞き取れませんが、とりあえず、「トイレはないよ!」と言ったのは聞き取れました。え? トイレはない?! いや、ここにあるんですけど。この扉の向こう側にはトイレが。え、いや待てよ。もしかしたら、この扉の先にはトイレはなくて、異次元へと通じるブラックホールになっているという可能性が……。だから、おじさんは「トイレはない」と言ったのかも。それは怖い……。でも、私は今、トイレをしないとダメなのです。もう本当に……。

考え込む私に、おじさんは再び何か話しかけてきました。その声に耳を傾けると同時に、おばあさんたちの乗車を手伝っていた係りの人が私とおじさんの間にあった扉をいきなりバタンと閉めました。え? 私、おじさんと話していたんだけど……?

やはり、このトイレの扉の先はブラックホールになっており、その秘密をばらされたくないがために、係りの人は私とおじさんの間を引き裂いたのでしょう。確信は増す一方です。私の尿意も増す一方です。係りの人に「トイレはないの?!」と聞くも、「ないない!」と強く言われ、足早にどこかに行ってしまいました。と、トイレがない……。

再・トイレはない

絶望しながらまりあたんの元へと戻っていきます。足取りは不確かで、目はうつろ。あぁ……まりあたん……。と、トイレはないんだって……。うん。トイレないって……。トイレ……。トイレ……。と、といいいいいいいいいいいいいいいいいいいいれ……。

うぐっ……。ここでくたばってはダメです。私にはトイレに行くという使命があるのです。それを遂行するまでは死ねません。わずかに残っている気力を振り絞り、決意します。少し時間を置いてから、もう一度トイレに行く、と。

それまでは席に座り、体力温存です。さて、どれくらいの時間が経ったでしょう。外はほのかに暗くなり、隣に座るまりあたんは舟をこぎ始めています。まりあたん、私はもう限界だ。行ってくるよ。いざ、決戦の時。ダダダダダダン(効果音)

「尿意」という見えない敵に妨害されながら、それでも負けずに、1階のトイレへと向かいます。取っ手はいまだありません。先ほどと同じく金属がむき出しです。私、握る。金属を。

ダ、ダン(効果音)

扉はビクともしません。しかし、ここで諦めてはいけない。頑張るんだ、私。自分で自分を鼓舞しながら、ありったけの力を金属に込めます。

おりゃああああああああああああああああああああ!

……ダメです。やはり、ビクともしません。こうなったら奥の手。最終手段です。トイレの横にある、バス会社の人と私を隔てる窓をドンドンドンドンと叩きます。ドンドンドンドン、ドンドンドンドン。

「トイレは使えますか?! トイレは?! トイレは???????????!!!!!!!」

「使えないよ!!!」

え……。

「トイレはないよ!!!」

ここでもまた「トイレはない」という言葉が……。「トイレはブラックホール説」は本当なのかもしれません。バスに乗っているバス会社の人まで「トイレはない」と言うのですから。本当はみんな私をブラックホールから守るために、一貫して「トイレはない」と言っているのかも……。そうか、そうなのか……。

みんな私のためを思って……うぅ。ありがとう。ありがとう。あふれでる涙が止まりません。もしかしたら、尿が涙として流れ出ているのかもしれません。それくらい、勢いよくあふれでる私の涙。あぁ……。みんな、優しい人たちばかりでよかった。命拾いしました。

失われゆく人間の尊厳

尿が混じった涙を拭き、まりあたんの元へ戻り、席に座ります。う……。ほっとした瞬間、再び戻ってきた尿意。ダメだ。これから十数時間バスに乗り続けるのに、この尿意を今、我慢できるはずがありません。でも、トイレはブラックホール。どうしよう……と悩んでいると隣から、天使のような声が聞こえてきました。

「ここでしたら?」

あぁ、そうか、ここでするしかないよね。そうだよね。幸い、私たちの後ろの席には人が一人もいません。これから人が乗ってくる可能性があるので、するなら今しかありません。迷う暇なんて、私にはないのです。即・決断です。

すぐさまバッグから袋を取り出し、後ろの席に隠れます。

ぴーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(音声を一部変えてお送りしております)

さて、すっきり! 意気揚々と、席へと戻ります。もう一度尿意がきたら、今度こそ耐えられる自信がないので、これから水は一滴も飲みません。まりあたんも同様です。しかし、まりあたんはずいぶん長いことトイレに行っていません。内心、これから十数時間耐えられるのか、と不安に思いながら、まあ、まりあたんのことだから大丈夫か! と、不安を楽観に変え、私は就寝態勢に入ります。

「おやすみ、まりあたん♪」

数時間後(夜中)。私の心の声。

「(うー、うー。トイレに行きたいよー)」

「(もー。途中で人が乗ってきてすべての席が埋まっているから、さっきの手は使えないよー)」

「(うー、うー。寝るしかないうー)」

一夜が明ける

さらに、数時間後(朝)。ちゅん、ちゅん。ちゅん、ちゅん(鳥の鳴き声)。

「おはよう、まりあたん」

「おはよう。みんなが寝ているのを確認して、トイレしちゃった♪」

な、なんと?! その場でトイレをした? 私の隣の席で? まったく気が付きませんでした。すごい。本当にすごい。その勇気と技術に感服です。もっと詳しい描写を書きたいところですが、ここでも割愛します。

朝になりバスが道中で止まりました。ここでしばし休憩のようです。外にトイレもあります。急いでそのトイレへと向かいます。ここのトイレには扉がありませんでした。ブラックホールではないので、扉でトイレを隠す必要はないのかもしれません。安心安全のトイレですね。

さて、すっきりした気持ちでバスへと戻ると……あれ? トイレの扉に取っ手が付いている……? 扉に取っ手が? これはどういうことでしょうか。トイレの中はブラックホールなので、取っ手が付いていたら、誰でも扉を開けられて、ブラックホールに吸い込まれてしまいます。やばい、ここは危険だ。私の本能がそう告げてきます。一刻も早くここから逃げなければ。しかし、皆を置いて、自分だけ逃げていいのか、自分だけ助かっていいのか、葛藤します。

名誉市民賞のために

うーん……。もしかしたら、取っ手が付いていても扉は開かないのかもしれません。ダミーの取っ手なのかもしれません。それなら安心ですが、念のため確かめなければいけません。私に今、課せられた使命。それは、「取っ手がダミーかどうか確かめること」です。これもみんなのため。

もし、取っ手がダミーではなく本物で、扉が開いてしまい、私がブラックホールに吸い込まれても、それは本望です。人類のために犠牲になれるのなら、それは名誉なことです。きっと、総理大臣から名誉市民賞を贈られることでしょう。

名誉市民賞のために、いや、人類のために、私は開けます。扉を。いざ。いえっ!

ガチャン(扉が開く音)

ぶ、ブラックホールに、す、すいこまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……ない?

あれ? 扉の先にはトイレの便器があります。本来あるはずのブラックホールがありません。いや、本来あるべきはブラックホールではなく、トイレのはずです。そこにトイレがあって当たり前のはずなのです。ここには、何も起こっていません。何もです。最初から最後までここにはずっとトイレがただあっただけなのです。

ということは、ブラックホールなんてものは最初からないということです。あれ? つまり、どういことだ?

まりあたん「この休憩場所でトイレを使わせるために(トイレ使用料がかかる)、今までトイレを使わせなかったんじゃない?」

そ、そうか。そういことか……。私の、私たちのあの努力はなんだったのだ……? ひどすぎる。危うく、人間の尊厳が失われそうになる事態を引き起こすほど、それほどまで私たちにお金を使わせたいのか! ボリビアのバス会社Trans Copacabana S.A.(「Trans Copacabana」は同じで「S.A.」だけ違う〈確か、Mなんとか〉別のバス会社もありますが、そちらは無関係です)はオススメしません。のちに書くブログでもオススメできない理由をさらに3つほど挙げます。

それでももし、このバス会社に乗るのなら、己の身に降りかかる災難はすべて自分のせい、誰も助けてくれない、と思っていたほうがよいでしょう。それでは、次回「私から二番目に大事なものを奪った国・ボリビア」に続く。